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セルフメディケーション税制の利用率は0.1%?普及しなかった理由は、小さな上限付きの所得控除という、実質的な効果の薄さにもある。

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セルフメディケーション税制の利用率は0.1%。

先日、そんな記事が新聞に載っていました。

普及しなかった理由はいくつかあるのでしょうが、そのひとつはセルフメディケーション税制が小さな上限付きの所得控除であって、実質的な効果があまりないという点もあると思うんですよね。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制とは、29年分の個人確定申告から導入された制度です。

インフルエンザなどの予防接種を受けるか、健康診断を受診して健康増進の取組をしていることを条件に、ドラッグストアで買う一定の市販薬の購入金額について、所得控除を受けられるというものです。

控除額は、

購入にかかった金額 - 12,000円 = 控除額(ただし、88,000円を上限)

12,000円とは、要するに、12,000円以上使っていないとダメという意味合いです。小さすぎる場合は控除の対象とはしないということです。

そして、12,000円を引いて計算する。ただし、控除額は88,000円が上限となります。

こうして見てみると、12,000円を引かなくてはいけないし、しかも上限は88,000円。10万円以上で、購入にいくらかかっても、控除額は88,000円が上限となります。

さらに、この制度は所得控除の制度なので、88,000円分の税金が安くなるわけではないという点にも注意が必要だったのです。

税額控除ではなく所得控除。そして、小さな上限88,000円。この実質的な効果はどれほどでしょうか。

金額が小さい所得控除の税額メリットは薄い

税金で控除ができると聞かされると、その分の税金が戻ってくると期待してしまいますが、所得控除の場合はそのまま戻ってくるというわけではありません。

個人の所得税の税金をざっくり説明すると、

所得金額 - 所得控除 × 税率 - 税額控除

の計算で、所得税は計算されます。

所得控除とは、社会保険料の控除や扶養家族の控除などと同様に、税率をかける前に所得からマイナスする控除となります。所得控除をしても、その金額でそのまま税金が安くなるわけでありません。

一方で、税額控除というものがあります。こちらは、計算した税額からマイナスする控除で、その金額がそのまま税金を安くする効果があります。住宅ローン控除が代表格です。

セルフメディケーション税制は、所得控除になります。

所得控除の場合、税額を計算する税率によって、どれだけの恩恵となるかが決まります。

29年分の確定申告で適用の税率表です。

どれだけ所得があるかによって、税率は違ってきます。儲けている人ほど、高くなる構造です。

所得税の計算が、(所得金額 - 所得控除 × 税率)であるということは、所得控除をすることで実際に安くすることができる税額は、

所得控除の金額 × 自分が適用される税率

になるということです。

たとえば、多くの家庭でボリュームゾーンとなることが想定される、税率10%の場合、セルフメディケーション税制の恩恵は、

88,000円 × 10% = 8,800円

(実際は細かい計算が絡むので、これより多少小さくなります)

「セルフメディケーション税制を満額でやると88,000円の所得控除ができる!」と聞くと、その金額の税金が安くなるように思ってしまいますが、このケースで計算した場合、実際に安くなったのは8,800円となりました。

これがどう感じられるかはそれぞれかもしれません。しかし、購入金額に比べると、効果は薄く感じられるような気がします。(8,800円は返ってはきますが)

そして、この控除を受けようとする場合は、確定申告をしなければいけません。

8,800円 VS 慣れない確定申告

セルフメディケーション税制が普及しなかったのは、周知が遅れたという理由だけではなく、実施的な効果の薄さもあるのではないかということで、実際にどれほどの控除となるのか見てきました。

上記のケースでは、88,000円の満額で計算していますが、市販薬をそんなに買うかといえばそうではない家庭もあるわけで、購入金額年間20,000円なら、数百円の税額メリットにまで落ち込みます。

さらに、この控除を受けようとするには、確定申告をしなければなりません。

個人事業やフリーランスで普段から確定申告をしている人を除いては、やはり確定申告は一般的ではありません。

サラリーマン家庭の方と税金についての話になったとき、本当は確定申告をすれば税金が戻るようなケースであったとしても、やっていないという人がいます。

その理由は、

「千円くらい戻るだけなら、やらなくても良いと思って」といったもの。

確かに、なじみのない人にとっては、千円を戻す確定申告でも、数時間ないし、半日程度の時間がかかってしまう場合があります。それを危惧するのです。

どんなに周知しようとしても、実際にメリットとなる税金の戻りと面倒さを比較して、面倒さが勝つようであれば、意味がないと思うんですよね。

そんなにも普及していないのなら、最低限度額の12,000円をやめるとかした方が良いでしょうね。

編集後記

けさは、5時半起床。

起きると、風は吹いていたけれど、陽が出ていなくて走りやすそうな気でした。

しかし、なんだかんだブログに時間がかかり、走れず。

ホームページの税務記事も、どしどし書いていきますよ~。


クラウド会計ソフト対応の税理士 野田翔一です

さいたま市大宮にてクラウド会計ソフトを専門をはじめとしてサービス提供をしている税理士です。クラウド会計ソフトを使った経理の効率化、請求書や給与ソフトとの連携で経理を楽にする提案・キャッシュレス対応へのアドバイスなどを得意としています。税務顧問・スポット相談いずれも対応しています。 税理士野田翔一税務コンテンツHPはこちら 代表プロフィール税務顧問 スポット税務相談 クラウド会計導入コンサルティング
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