ここ最近、増えてきているのが、税務署からの扶養控除の是正。
会社で年末調整をした結果について、ある従業員の扶養控除が違っていますという通知が、税務署から送られてくるものです。
扶養控除等で増える税金は、案外大きいので気をつけたいポイントです。
※今日の記事は、平成29年12月21日現在の情報で書いています。
給料の税金と計算のしかた
会社で従業員の年末調整をする場合、その従業員の一年分の給与を集計し、その額面をベースに今年の税額を計算します。従業員の毎月の給与からは、一定額天引きされているので、その天引き合計と、一年分の給与で計算した税額とを比べ、天引き合計の方が大きければ、年末に還付されるという流れです。
給料の税金は、ざっくりいくと以下のように計算します。
給与総額 - 給与所得控除 - 各種控除 × 税率(控除額を考慮)
ここから、住宅ローン控除がある場合は、その税控除を受けることが出来ます。
この計算にある、各種控除。ここに入るのは、配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除・社会保険料控除といった控除のことです。
生命保険料控除や社会保険料控除は、すでにベースの数字が決まっているので、計算を間違えなければ誤りは出ません。
一方で、それが使えるか使えないかが、従業員の方の自己申告で行われるのが、配偶者控除や扶養控除です。
その扶養控除が、「間違ってますよー」という扶養の是正が、よく見られるようになってきたというわけです。
最近増えてきている、扶養の是正
税務署から通知がくる扶養の是正では、以下のようなことが書かれています。
・平成何年分であるか
・従業員の氏名
・従業員の年末調整で適用した配偶者控除の妻(夫)の名前、扶養控除を適用した子の名前
これらが書いてあり、配偶者控除や扶養控除をした者のうち、適用にならないものについて通知がきます。
もっともよくあるパターンが、子を扶養控除としているケース。この扶養控除、子を適用しようとするときは、一人につき38万円あるいは63万円控除を受けられます。
原則38万円。12月末で19歳以上23歳未満であれば特定扶養親族となり、63万円となります。
たとえば、
・16歳の高校生を38万円控除
・20歳の大学生を63万円控除の扶養控除
として、会社に提出していたが、実は2人ともバイトで稼ぎ過ぎて年間給与が103万円を超えてしまっていました。となると、いずれの扶養控除も使えないことになります。
この場合、38万円と63万円で101万円分の控除が大きかったことになります。
単純に計算すれば、この控除を受けられない金額 × 税率(控除額あり)の分、その従業員の税金が増えます。
扶養控除が減額された結果、
(給与総額 - 給与所得控除 - 各種控除)は是正により大きくなることになるわけです。
これを、以下の税率表にあてはめます。
国税庁HPより
この表で、(A)が、
是正前 500万円であったなら、税額は、572,500円
是正後 500万円+101万円(601万円)で、税額は、774,500円
是正により、202,000円も税額が増えてしまいます。
このケースだと、是正前と是正後の税率が同じですが、是正により20%のエリアから23%のエリアに移行する場合があります。
こうなれば、税額はより大きくなります。また、是正は1年分のみならず、数年分であれば、その分大きいダメージです。従業員の方が、すぐに払えないという可能性もあります。
こうして、結果的に是正となったとき、この是正分を納付するのは、従業員ではなく会社だという点に、気をつけたいところです。
会社が納付し、本人からもらう
会社に従業員の年末調整結果の扶養是正がきて、実際に誤りがあった場合には、追加で納付することになる税額は、会社に納付義務があります。
従業員の源泉所得税は、原則として会社が納めることになっているからです。
流れとしては、こうです。
1 会社が差額を納付
2 その納付額を、従業員からもらう
結果的には本人負担ではありますが、まず税務署は会社から徴収します。
このとき、従業員本人が会社に支払うことを拒んだとしても、会社は税務署へ納付しなければいけないことになっています。こういうことになると、トラブルになるのですが・・・。
特に、従業員と折り合いが悪いとか、すでに従業員がやめている場合、こうしたケースになる可能性があるので、会社の側としても従業員の扶養については要確認です。
また、従業員の側からすれば、所得税が増えると同時に住民税も増えることになります。
年末に扶養家族の変更があり、やむを得ないのは仕方ないとして、いい加減に管理しておいては誰得でもありません。
今後、マイナンバーの管理ですべてが把握されると、より多くなりそうな問題です。気をつけておきましょう。
編集後記
扶養の是正があると思えば、年末調整も少し気を引き締めてできるかもしれませんね。
気付けば年末・・・年内に片付けておきたいこと、準備しておきたいことは、なるべく前倒しで実行中。
ひとつ片付けば頭に余裕もできます。片付かないことはメモで。