会社の経理はどんなに小さい会社であったとしても、そこそこの会計処理はしなくてはいけません。日々の取引、資産の取得、備品の購入、経費の支払い、償却、棚卸処理・・・考えればいくらでも出てくるものです。
そのいずれについても言えることなのですが、始めた会計処理は、その多くは続き、終わりがあり、始まりを処理しただけでは完了しないというルールがあります。
それはまさに人との出会いと別れのように、出会ったらその先があるように、会計処理もやりっぱなしでは済まないのです。
人との出会いと会計処理
人との出会いには、いろいろあります。
出会ってしまえば、その先なんらかの動きが出てくるのが人間関係というものです。
出会って、さらに仲が良くなり、進展するか、あるいは仲が薄くなりなんとなく離れるか、離れると決めて決別したり、多岐にわたります。
これと同じように、会社の経理である会計処理にも、出会いがあればその続き・終わりがあり、出会ってそれで終了ということにはなりません。多くの会計処理は、その続きがあるものです。
今日は、始まりとその続き、終わりを見ながら、それが会社の数字にどう影響してくるものか、考えてみます。
資産を買った場合
会社を運営していくうえで、事務所の備品や工場の機械、運搬に使う車両、経理に使うパソコンなど、いわゆる会計用語でいうところの固定資産の取得はつきものです。
固定資産と堅苦しくいっていますが、まぁ設備投下です。大きなモノを買うということが、固定資産の取得と言って差し支えないです。
こういった資産を買ったとき、どう会計処理=出会いとその先、を処理していくのか、見ていきます。
たとえば、運搬用の車両を百万円で購入してきたとしましょう。
・購入時の処理はこのようになります。
(車両運搬具) 1,000,000 (現金預金) 1,000,000
※これが出会いのポイントになります。嬉しいものです。
そして、その車両は荷物の運搬に貢献するわけすが、これが出会いの後、付き合いを続けている仲といえるでしょう。
その仲を会計処理で表すならば、毎期末の減価償却が付き合いを表すことになるでしょう。
・期末の減価償却(期首に取得して、5年定額償却と仮定)
(減価償却費) 200,000 (車両運搬具) 200,000
※減価償却は、うまく付き合っている仲を示していると考えます。
~そして、その後も数年にわたりは運搬に貢献し、出会いから長い付き合いが続いていくのですが、出会いがあれば別れがあることもあります。人との出会いがいつの日か別れとなるのと同じように、資産の購入の処理から始まり、付き合いの償却、そして売却という別れがあります。
・車両の売却(すでに800,000円償却をしてきて、いま200,000円残っています)
(現金預金) 300,000 (車両運搬具) 200,000
(車両売却益) 100,000
残りの金額より高く売れれば、車両売却益がたちます。10万円のプラスです。
(現金預金) 100,000 (車両運搬具) 200,000
(車両売却損) 100,000
残りの金額より、安く売れた場合は、売却損がたち、10万円はマイナスになります。
※これが出会いの後、別れを表します。廃棄である除却はなんだか悲しい感じなので、割愛しました。売却と同じで、手元から離れることは同じです。
商品の購入と、棚卸処理、売却
商品販売業の場合の商品の仕入の処理も見てみます。
商品の仕入をしたとき、その仕入は一度経費科目である仕入高に入りますが、期末に棚卸処理があるため、期末に売れ残った商品は仕入高からマイナスして、実際に経費になるのは、当期に売れた商品に対する仕入原価となります。
この処理を追う過程でも、人との出会いと別れが垣間見えます。
・商品を仕入れる(10万のモノを10個買ったとしましょう)
(仕入高) 1,000,000 (現金預金) 1,000,000
※ここが出会いのポイントです。始まりです。
そして、期末に棚卸をして、仕入れた商品のうち、売れ残りがどうなっているが調べます。
・期末の棚卸処理(仕入れた10個のうち、5個は売れ残ったとしましょう)
(繰越商品) 500,000 (仕入高) 500,000
経費科目である仕入高に入っている500,000円を、ストック科目である繰越商品に切り替える処理をします。
仕入れた1,000,000円のうち、500,000円だけが仕入高に残り、売れ残った分の500,000円はストック科目の繰越商品へ移ります。
そして、仮に前期に売れ残ったものが3つあり、300,000円の商品が当期の期首にあったとしましょう。そして、それは当期に売れたと考えましょう。
そのときは、こう処理します。
(仕入高) 300,000 (繰越商品) 300,000
前期にストックに入れた300,000円は、当期に仕入高である経費科目に入ることで、経費になるわけです。
これを2段で示すと、
(仕入高) 300,000 (繰越商品) 300,000
(繰越商品) 500,000 (仕入高) 500,000
となり、よく簿記や経理で棚卸処理をするときに言う、「しーくりくりしー」になるわけです。
これが、出会いの後、付き合いと別れです。
具体的には
(繰越商品) 500,000 (仕入高) 500,000
これが出会いのあとで、付き合っているとき。
(仕入高) 300,000 (繰越商品) 300,000
前期に残った商品のうち、当期に売れた分の、当期にストック科目から経費科目に移したこの処理が、別れを示しています。
出会いと別れいくつもある
人生生きていると、仕事やプライベートで様々な出会いがあり、出会いがあれば末永く付き合っていく友人関係、恋人関係、取引関係などがある一方、もちろん別れや決別もあることです。
これと同じで、会社でも個人事業にしてもいずれにおいても、商売をやっていくなかでは様々な会計処理が行われていきます。
今回紹介した以外にも、始まりがあれば続き・終わりがあるものというのはいくつも考えられます。
例外的に出会いで終わるもの、たとえば日々の経費の支払いや少額の備品の購入など、初期の処理で完了するものもあることはありますが、続きがあるものも多いです。
今回は触れませんでしたが、会計処理のみならず、税金という側面まで考えれば、さらにいろいろと考えられます。予期せぬ展開もあるでしょう。
会社の会計処理や税務処理は、考えられる展開と予期せぬ展開両面があります。
人との付き合いと同じように、常にそのあたりを意識して、アンテナを張って、知っておくべきことは知っておく。理解すべきことは理解しておく。気がかりなことは懇意にしている税理士に聞いてみる。などしておくべきでしょう。
編集後記
昨日は千駄ヶ谷の東京税理士会で午後から研修受講。
岩下忠吾税理士の相続研修でした。
岩下税理士は、税金の話のみならず、税理士として、職業人として、人としてどうあるべきかというところまで、たまに語るときがあります。
昨日は少なかったような気もしますが、少ないながらメモしてみました。なにかのネタにつながるかもしれません。
ここまで含めて研修費用と考えてます・・・!