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できれば避けたい、売上債権の貸倒れ・・・。貸倒損失はそれだけで大損なのに、税務リスクで二重苦・三重苦もあり得る。

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商売・ビジネスをしていると、商品を納め、仕事の提供は終わっているのに、売上金額の入金が滞るということが、まれに起きることがあります。

再三にわたって、催促をしているにもかかわらず、入金されない。

最悪の場合は、貸倒れということも考えられます。

この、売上債権の貸倒れ。

売ったのにお金がもらえない時点でダメージなのに、貸倒処理をして経費に計上したものの、税務調査でそれが否認されるという、まさに二重苦・三重苦を食らう可能性も考慮しておきたいところです。

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売上は入金されなくても、売上計上される

商売・ビジネスでは、商品を納め、サービスを提供して、代金の入金は後日という、いわゆる売掛取引があります。

通常、商品・サービスを相手に渡し、一定期間経過後の入金を約束してもらい、後日お金をもらいます。

ただ、どうしても入金が滞るということが、まれに起きてしまいます。

売掛取引は、後でお金をもらうという取引の性質上、相手に信用が求められます。ただ、その信用を計るのは、正直難しいです。

よくある形態としては、最初の取引は前金でお金をもらい、その後に商品やサービスを提供します。それが何度かスムーズにいけば、そのうち売掛取引に移行するというケースが多いでしょう。

売掛債権の入金が滞るパターンが多いのが、売上が欲しいがために、初回から売掛取引をしてしまう場合です。

初回の打ち合わせで会ってみた感触で、「良い人」「しっかりしていそう」と判断してしまい、結果、物は納めたのに入金がないということになります。

結局、再三にわたって催促しても、「今度今度」「払う払う」という連絡を受けるのですが、なかなか入金がない。下手すると、事務所を引き払って、行方をくらます可能性もあります。

また、何度か取引を行っている相手でも、なんらかの事情で入金が滞るということもあり得ます。

こうした、商品やサービスを提供したにもかからわらず入金がないという状態。こんな売上ではあっても、売上は売上です。売上として、すでにもうけに計上されてしまっているのです。

売上の計上は、いつ認識すべきなのか?

売掛取引を行い、商品・サービスを提供すると、入金がなくても、それは売上となってしまいます。

会社の利益を計算するときは、取引の動きを見て、売上、仕入、経費の計上を行います。

売上であれば、売ったとき。仕入なら、仕入れたとき。経費なら、物を手にしたときやサービスを受けた瞬間です。

これについては、以前書いています。

経営者が注意しなければならない、収益・費用≠収入・支出、という概念

この計上方式を、発生主義と呼びます。基本、この方法で処理することになります。

お金をもらっていなくても、売上ですし、払っていなくても仕入、経費です。

では、売上の計上とは、どう判断すれば良いのか?

実際は、会社ごとに異なることとなります。よって、これと決めた方法で、定めていくことになります。

具体的には、

・商品サービスを納め、相手に請求書を発行したとき

・サービスの提供が終わったとき

・相手方がチェックして、OKが出たとき

など、さまざまです。業種や業態によってですね。

こうして、入金はなくとも、売上として収益に計上されてしまいます。滞っていて、入金が遅れていても、その売上金額は、会社の利益を構成しているので、法人税、消費税などの税金の発生原因となっているというわけです。

入金がないのに、売上となり税金もかかってしまった、売掛債権。これはどうしようもないのでしょうか?

最後の手段として、貸倒損失として、費用計上するという方法があります。いわゆる、「落とす」というやつです。

しかし、この貸倒損失ですが、税務的には結構要件が厳しいです。最悪の場合、税務調査で否認されるというリスクもあります。

税務上、貸倒れとして処理できるケース

税務上の貸倒損失を計上するための要件は、細かく規定されています。

会社や事業主が、なんとなく貸倒処理することを抑制する作りになっていて、結構厳しめにできていると言われています。

売上債権の入金がある程度滞り、これはもう貸倒にするしかないという状況になったとしましょう。

この場合、主に以下の要件に当てはめて、処理することになります。

・法律上の貸倒れ

・事実上の貸倒れ

・形式上の貸倒れ

この3つのどれかに当てはめます。

法律上の貸倒れは、法律の適用により、更生計画・再生計画などの決定により、債権が切り捨てられた場合で、法的に貸倒れたというケースです。

このパターン。ある程度の規模の会社であれば、こういった手続きをとるかもしれませんが、そうでなければ、こういった手続きはしないというケースも多いでしょう。ただ、これの適用であれば、税務署も文句なしに貸倒処理を認めます。

事実上の貸倒れは、相手の金銭状況や支払い能力からみて、明らかに支払うことが出来ないと判断される場合等を指します。

ただ、これも具体的にどうすれば良いかと言うと、なかなか難しいところです。事実認定として、支払い能力がないと、証明する必要があるでしょう。

相手方の事務所に行ってみると、もぬけの殻で行方をくらましているのであれば、それを証明する。または、多重債務を負っていると客観的に判断でき、証明できれば良いのでしょうか。理由やレベルの違いはあれ、これに当てはめて落とすなら、明確に自信を持てる理由を持つことでしょうね。

形式上の貸倒れは、ある要件に当てはまれば、相手の状況いかんに関わらず、貸倒処理が出来るというものです。ただ、これも要件はあります。

これは一定期間取引停止後弁済がない場合の貸倒とも言われていて、要件がクリアできれば貸倒が認められます。

具体的には、

その相手方との最終取引日か最終弁済日から、一年以上経過した場合

相手方が遠方で、取り立て催促しに現地に赴くことで、売掛債権よりも交通費の方がかかってしまう場合(取り立てることで、逆にマイナスになる)

このいずれかに当てはめて、備忘価額を残して残額を貸し倒れにできます。

売上債権の入金が滞っている際に、それを貸倒損失にするためには、条件が合致するいずれかにあてはめ、そのうえで損失計上することを求められています。

売掛債権の回収ロス、貸倒れは二重苦・三重苦

ここまで、貸倒損失の立て方について、見てきました。

しかしながら、よくある売上債権の滞りは、本来は支払えないわけではないが、支払いを渋っているとか、本質的に筋が通っていない失礼な相手で、誰に対しても意に背くような対応をする人であったりするもので、言っても支払ってもらえないというようなケースが多いのではないでしょうか。

となると、1つ目、2つ目の要件は、合致しないでしょう。おそらく、3つ目の要件に当てはめて、貸倒処理とするケースが多いかもしれません。

これは、現実の状況と、規定がミスマッチにありますよね。法的であるとか、懐具合を証明するとか、民間レベルでそうそうクリアできる条件とは言い難い部分が大きいですよね。

要するに、なるべく貸倒処理はさせたくないということなのでしょう。貸倒損失の計上は、大きな金額が損失として計上されます。実際、要件の詰めが甘いと、税務調査で指摘されて、否認されるというケースもあります。

本当は支払えるはずなのに、支払ってもらえないというようなケースの場合、貸倒を立てるのであれば、要件との整合性を確認し、詰めを細かくしておくと良いでしょう。

実際の処理に当たっては、国税庁から出ている要件をもとに、当てはめていくことで、税務リスクはより回避できます。

個人のケース

法人のケース

貸倒でダメージを追う、こちらの側からすれば、売上は計上されていて税金がかかっている。そして、売上金額の入金がないという状況。さらに、要件が甘いからと、貸倒処理(費用計上)すら認められなければ、二重苦どころか、三重苦にもなってしまいます。

こういうシチュエーションがあるということを踏まえたうえで、日々の取引に向き合いたいところです。目先に踊らされず、冷静な判断をしましょう。

もし万が一、貸倒ともなれば、しっかり要件を詰めて、否認されない処理を進めましょう。

編集後記

昨日のブログで書いたFP3級完全合格。

自宅に帰ると、合格証書と成績表が届いていました。

筆記は52/60 実技は95/100 というスコアでしたね。

なにやら証書もしっかりしているし、3級とはいえ、なかなかうれしいものでした。


クラウド会計ソフト対応の税理士 野田翔一です

さいたま市大宮にてクラウド会計ソフトを専門をはじめとしてサービス提供をしている税理士です。クラウド会計ソフトを使った経理の効率化、請求書や給与ソフトとの連携で経理を楽にする提案・キャッシュレス対応へのアドバイスなどを得意としています。税務顧問・スポット相談いずれも対応しています。 税理士野田翔一税務コンテンツHPはこちら 代表プロフィール税務顧問 スポット税務相談 クラウド会計導入コンサルティング
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