正しい節税をすれば、問題なく税金の支払いを減らすことができます。
しかし、節税は手段であって目的ではありません。
節税を考えると節税が目的になり、税金のことだけを考えて他が見えなくなってしまうということはあるものです。
節税は手段にとどめておくものだと考えています。
節税は目的ではなく、手段
節税は目的ではなく、手段だと考えています。
目的とする取引、お金の使い道というものがはじめにあり、それを前提にしたうえで節税策はないだろうかと考えるのが、本来の在り方ではないでしょうか。
節税が目的になると、本来ベースとなるべき取引、お金の使い道がブレます。節税に合わせて動くようになるからです。
節税メソッド的なものは数多くあり、そのいくつかは本来の目的行動を明らかに歪ませているように見えるものもあります。
やろうとしている節税、税理士やコンサルタントに提案された節税をしようとするとき、それは目的なのか、手段なのか判断して行った方が良いです。
それで良いのか?今一度考えてみる
節税をしようというときは、なんらかのお金の支払いが生じ、必要な経理・税務処理をすることで、税金の支払いを減らすことができます。
節税は手段ではなく目的であるとは言いつつ、税金のことやお金のことを考えているうちに、正しい判断が道を逸れることはあります。
これで良かったのか?決定をする前に、もう一度考えるみることが必要です。
具体的に、どんな行動と節税、その判断があるかみていきましょう。
中古の車で良かったのか?
仕事で車を買う場合、一般的な乗用車であれば6年で償却となり、購入から6年かけて経費化していきます。
そこを中古で購入した場合、6年の年数が使用された期間が減り、経費化の期間が短くなります。
たとえば、5年経過の車であれば、
6年 - 5年 + (6年×20%) =2.2年
端数を切り捨てると、2年になります。
となると、「そうかそうか、新車で買うと6年で経費に落とすところ、2年で落ちるのか。中古にすると得だな」という判断がでてきます。
ただし、ここで気をつけたいところ。「その買い物、中古で良かったのか?」
もともと中古で良かったのであれば良いのですが、節税が目的になって中古を買うのであればやめておきましょう。
ケースもよりますが、「節税だけ考えて中古で買ったが、やはり新車にしておけば良かった」という話を聞くこともあります。判断を決めるとき、今一度考えてみましょう。
過剰な設備投資、必要でしょうか?
決算の打ち合わせをするときに、こんな話を聞くことがあります。
「この間、機械のメーカーの人が来て、儲かっているんでしたら機械入れ替えしませんかって言われたんですよね。でも、つい数年前に入れたばかりだし・・・」
設備投資をすれば、その分の償却が増え、経費が増えて税金は減ります。
つい数年前に入れた機械の償却がすでに終わっているのであれば、より節税効果は期待出来ます。
しかしながら、その設備投資(あるいは過剰な設備投資)、必要でしょうか?
とはいえ、日々性能は上がっている機械や設備。買い替えれば生産性は上がります。
しかし、当面は現状の設備で良いと思っているところで、節税を目的に買い替えるのは、節税が目的化してきている可能性があります。
ここでも、今一度考えてみましょう。
その保険、必要ですか?
節税策というキーワードで検索すると、多くの節税策が出てきます。
そのなかでも、良く言われるのが、保険に入って節税というモデルです。
「節税にもなるからって、保険勧められたんだけど、どうかね?」という相談を受けることはあります。
商品にもよりますが、支払った保険料の大部分が後で戻るというものがあり、そういった保険に入れば長いスパンで見たときには、お金の支払い負担は小さく見えます。
相談に対しては、節税にはなりますが「必要であれば入ったら良いですよ」と答えています。
節税とプッシュされると、それが正しいように思えてきますが、自分でも十分考えてからにしましょう。
保険はお金の支払いが生じます。そのお金を支払ってあまりあるのであれば良いのですが、節税だけ考えて保険料を支払った結果、お金に困るというケースもあります。今日のお金に困ることが想定できるのであれば、今一度考える余地はありそうです。
利益から税金を引いた残りが、自由なお金
節税は、目的ではなく手段ととらえておきたいものです。
車も、中古を考えていたのなら良いでしょうし、中古も良いなと思えるのであれば良いでしょう。
設備投資も「そろそろ・・・」と考えていた矢先なら良いでしょう。
保険についても、保障内容まで確認しつつキャッシュの面でクリア出来そうなら、オマケで節税が出来そうなもので加入するというのなら良いでしょう。
いずれも、自分がどう思っているか。後で後悔しないことが大事になってきます。
今回紹介した節税策を含めて、多くの節税策はお金の支払いを生じさせます。
お金を払って経費を増やして節税!とはなっても、最終的に自由に使えるお金が残っていないのは、あまり良い状態とは言えないものです。
利益から、支払った税金を差し引いた残りが、自由に使えるお金です。その留保が、もしものとき、必要なときに役に立ちますからね。
税金を減らすことが先行して、本来あるべき判断を誤らないようにしましょう。
編集後記
商品を勧められるとき、それをもって悩みのすべてが解消されると提案されることがありますが、よくよく考えてみれば他にも手段はあったりします。
なんとなく信じてしまったりしますが、節税しかり、ほかの悩みしかり、今一度考えてみることで、違った判断ができる場合があります。