酒井克彦教授の研修会を受講。実務とは違う、法律をどう読むかという解釈が面白い租税法。


昨日は、税理士会主催の研修会で、中央大学の酒井克彦教授の講義を受講してきました。

講義題は、「租税法解釈入門ー税理士が知っておかなければならない解釈論ー」というもの。

税金の実務ではなく、租税法という税金の法律の方をどう解釈するのかというお話。

なるほどなーと思うこと多数。実務でも使えそうな考え方を学んできました。

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税理士試験では触れることのない、租税法という学び

税金についての学びをかなり大きく分けると、

実際に税額がいくらになるのか、計算はどうするのかといった税務実務というもの。

税法という法律で規定する税金について、法律を見ながら、どう解釈するのかということをはじめとして、裁判例をもとに検討したりする租税法という学問。

ぞれぞれ、あります。

このどちらが欠けてもいけないわけで、実務が租税法を支えて、租税法が実務を支えているという感じでしょうか。

ちなみに、税理士試験では租税法という科目はなく、どう読むかという勉強は基本的にしません。どう判断して、どうやって計算するかという実際的なことが中心です。

租税法については、税理士をはじめとした実務をやっている者がメインではなく、学者先生である大学の教授の先生が中心の畑です。(もちろん、税理士で学者。という方などもいます)

そのなかでも、酒井教授は実務寄りの先生なのかなという印象があります。

というわけで、酒井教授の租税法解釈入門を聞いてきました。

文理解釈と目的論的解釈という解釈手法

昨日の研修会は、5時間ほどの研修でした。

租税法解釈入門とは言っても、5時間で入門を網羅できるはずもなく、大事なポイントを取り上げてのお話となっていました。

そのなかでも興味深かったのが、

「文理解釈と目的論的解釈」という、法の解釈のお話です。

文理解釈とは、法律に書かれていることをそのまま読み、そこから逸脱しないという解釈の方法。

目的論的解釈とは、その法律が意図することの目的に沿って、法律を解釈するという方法。

とても分かりやすかったのが、ホステスの報酬から差し引く源泉所得税の法律解釈でした。

一般的に、ホステスさんはそれぞれが個人事業主扱いで、お店に雇われていないケースがほとんどです。

ホステスさんは、お店から委託を受けて、外注的に仕事を受けていることになっています。

お店は、そんなホステスさんに報酬を支払うときに、源泉所得税をいくらか天引きして支払うルールがあります。

その、天引きする源泉所得税をどう計算するかが問われた裁判があり、そこで文理解釈と目的論的解釈が問われたのです。

そのまま読むか、目的に則して読むか?

ホステスさんに支払う報酬から差し引く源泉所得税は、以下のように計算することになっています。

同一人に対して1回に支払われる報酬 -(5,000円 × その計算期間の月数) × 10.21%

今回の講義で取り上げた裁判例では、5,000円に乗じる計算期間の月数が、どんな月数なのか、というのが争点でした。

文理解釈と、目的論的解釈で、それぞれ異なる見解がでたというわけです。

講義では、月に2度支払いがあるケースでみていきました。

4月1日~4月15日までの分は、4月15日に。4月16日~4月30日までの分は、4月30日に払います。この場合に、計算期間をどう考えるか?というお話です。4月1日~4月15日のみに的を絞って話は進みました。

・文理解釈の場合

文理解釈でみると、そのまま文章を読むので、1日から15日で、15日間と読みます。

仮に、その期間に支払った金額が20万円で、出勤日は10日だったとしても、

20万円 - (5,000円 × 15日間) ×10.21% = 12,762円

日数はその1日~15日をみての15日でカウントして、15日。それで計算します。

・目的論的解釈の場合

目的論的解釈の場合、その法律が目的としていることに沿って読むので、文理解釈とは違ってきます。

10日の出勤なのだから、15日の計算期間がベースにあっても、10日でカウントしようということになります。(出勤日数で見ることが、目的でしょうという考え方です)

20万円 - (5,000× 10日間) × 10.21% =15,315円

それぞれ、どちらと読むのかというのが争点です。

結果的に、ここで扱った判例では、計算期間は全日数と読むという判断がでました。計算期間で見るというのは、そのまま文理解釈で読んだということなんですね。

実際の税務実務でも、この判例の判断を受けて、国税庁のホームページでも、全計算日数で計算すると書いてありましたね。

No.2807 ホステスなどに支払う報酬・料金

どう読むか、解釈するかという、とても興味深いスタディーでした。

税理士の実務では、通達という法律とは違うのだけれども、税務判断の基準になるものを使って、判断する機会は多いです。基本の法律を知ったうえで、細かい要件の場合にどうすれば良いか考える材料になっています。

その一方で、法をどう読むか。今回でいえば文理解釈と目的論的解釈というのがあって、考えようによっては違ってくるケースがあることはあるのだなと思いましたね。

こういう見方・考え方があるのだなということは、知っておきたいことです。

一貫して、「なるほどなー」と思うことが多い研修参加でした。

編集後記

けさは、6時すぎに起床。

なにやら昨夜からコンディションがイマイチで。

起きると、やはり喉をやられていました。

病院に行き薬を塗ってもらい、夕方には多少なりとも回復。早めの対応が大事ですね。


クラウド会計ソフト対応の税理士 野田翔一です

さいたま市大宮にてクラウド会計ソフトを専門をはじめとしてサービス提供をしている税理士です。クラウド会計ソフトを使った経理の効率化、請求書や給与ソフトとの連携で経理を楽にする提案・キャッシュレス対応へのアドバイスなどを得意としています。税務顧問・スポット相談いずれも対応しています。 税理士野田翔一税務コンテンツHPはこちら 代表プロフィール税務顧問 スポット税務相談 クラウド会計導入コンサルティング
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