最近、税理士・会計士・弁護士である関根稔さんの「税理士のための百箇条」を読み返していました。読み返したのは数年ぶりで、今となっていろいろ気付くような論点があり、考えることも多数ありましたね。
そのなかで、冒頭ではありますが、「税務処理にはストーリーが必要である」という項目があります。
今日は税務処理とストーリーについて考えてみます。
税理士の仕事
「税理士のための百箇条」は、税理士として仕事をしていくうえで出合ういろんな問題にどう当たるか?税理士はどうあるべきか?税法はどのように考えるか?などなど、税務を仕事のメインにしている税理士としては、読んでおくと良い書のひとつ。
以前に読んで、最近再び読み返していて、なるほどなぁというところが多数あった。
そのなかでも、最近あげたこの記事
自分の仕事の感覚、税理士でいえば会計税金をとらえる感覚を言語化するのは難しい!
にて、自分が感覚的にとらえていることで、表面には出てきていないけど、会計や税金についてどういう感覚を持ってとらえているか、扱っているか、言葉や文字にするということを考え、それは容易じゃないということを考えてみました。
自分の感覚から引っ張り出してきて、言葉や文字にすれば、自分の仕事について表現もしやすくなるし、説明をする際にもその考えを伝えつつ説明すれば分かりやすいんじゃないか?などなど思っていました。
そんなところで、出てきた「税務処理にはストーリーが必要である」
これも、普段は意識していないかもしれないけれど、根底にはあるもののひとつではないか?と!
税務処理とストーリー
「税務処理にはストーリーが必要である」という項のはじめに、
~ストーリーという言葉にはどこか虚構の響きが感じられて、気になっていた。真実と異なるうそ を作り上げるようにも聞こえてしまうからだ。
という部分があります。
ストーリーといっても、決して、うそではなく、事実のストーリーが必要であるということ。
そして、そのうえで、利益が多額に計上される予定の会社を例に、この期に会社で保有している昔から持っているかつて地価が高い時期に高い金額で購入した土地で、現在は時価が下がり含み損のある土地があり、その土地を社長に売ってしまうという処理が出てきます。
かつて高い金額で買った土地を、現在の時価で売れば、その分会社には売却損が生じてきます。仮にバブルのときに1億で買ったが、今は2,000万であって、売ると8,000万の損という感じでしょうか。
当期の想定利益が1億だとすれば、この売却損8,000万で、利益は2,000万にまで減ります。
これが税務調査では作為的でないかという疑念が出てくるわけですよね。しかも売り先は社長であるという点もありますしね。
しかし、このまま単に利益調整として税務処理を終えてしまえば、本当に作為的であるとして、税務調査で問題となる可能性は高い。
だからこそ、「税務処理にはストーリーが必要」となってくるようです。
ここで本書では、
「経営を息子に譲るために、自分の代につくった含み損は解消して綺麗な貸借対照表にしたい」
というストーリーを表現していて、税務処理に理由を持たせているというわけです。
この他にも、銀行からの指導もストーリーとしてあげられています。
いずれにしても、もっともなストーリーがあるべきであるということは確かなように感じます。
認められた方法で、節税対策だ!ではなく、ストーリーを持つことで、単なる事実や根拠に他ならない理由が付けがされるということでしょう。
日常的な処理でも、ストーリーは大事なように思える
会社利益と含み損のある土地の売却による税務インパクトを利用した税務処理は、日常的に多発するものではないかもしれませんが、大きな取引や処理でなくても、ストーリーは重要になるように思います。
たとえば、会社の小さな取引だとしてもストーリーが必要になってきます。
・社長が飲みに行ったときの飲み屋のレシート1枚
社長が追加の経費でこれがあった、という感じで持ってくることが予想されるものが、飲み屋のレシート。宛名には会社の名前が書いてあって、当期の期間のものであることも日付から確認できます。
ただ、それだけでは交際費は認められないわけです。
まずは仕事で行ったのか?家族と休みの日に行ったのなら論外です。
そして、仕事で行ったなら、誰と行ったのか?取引先A社のB役員であるなど、示すことも必要です。
ストーリーを考えるなら、
「新たに受注を受けることになったA社と最終打ち合わせをしていて、この日にまとまり、そのあと役員のBさんと会食をしたんだよね。仕事の考え方とか、理念とか聞かせてもらって・・・」
という感じであるとベストなんでしょう。ただ、レシート1枚1枚についてこうあるというのは難しいでしょう。だいたいのストーリーがあればよいのです。
また、これが若手社員数名との意見交換みたいな感じなら、そもそも交際費ではなく、福利厚生費ですしね、交際費否認の別表15の概念は生じてきません。
また、会社の備品やセミナー参加費などもしっかりストーリーがあれば問題ないはずです。
会社で生じている何かの問題を解決するために・効率をよくするために、買った・参加したというストーリーなど、事実に照らし合わせてまとめることは必要となってきます。
むしろ、逆をいえば、ストーリーがうまく作れないなら、それは?ということかもしれません。
この仕事をしながらにして、ストーリーストーリーとはあまり考えていませんでしたが、実際には頭の中ではストーリーに似た考え・感覚はあったように感じますね。
数年前の法人税の試験でも、理論の回答は、結論・理由・根拠条文の提示の三拍子がありましたが、これもストーリーでしたね。
ストーリーは自分の中から引っ張って記しておくことにします!
編集後記
ブログページ上部のセミナーページ、更新しました。
会社の税金会計を感覚でつかむ。今日の記事の内容に似たものもお話しできそうです。
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