年が明け、早くも半月が経過しました。
個人事業でビジネスをやられている方は、そろそろ確定申告の準備をしているころでしょう。
個人事業がある程度軌道に乗ってくると、法人事業への移行を考えるケースがあります。いわゆる法人成りです。
個人事業でやるのと法人事業でやるのとでは、仕事の内容が同じだとしても、実際は多くの相違点があります。
今日は、個人事業と法人事業の利益。そして個人と法人のお金の感覚をとらえてみます。
個人・法人、利益の計算の仕方
話を単純化するために、1人でビジネスをしている小規模事業を基本として、利益をみていきます。フリーランスでやっているようなイメージですね、
基本的に、個人でも法人でも、利益を計算する上での考え方はほとんど変わりません。
収益から費用を差し引いた金額が利益です。
個人事業の場合、青色申告であれば、青色申告決算書にて利益を計算します。個人事業の場合、この決算書では利益という言葉は出てこないのですが、収益から費用を差し引いた金額が「青色申告特別控除前の所得金額」として計算され、これが利益と同意になります。
この、控除前の所得金額から青色申告特別控除(10万or65万)を控除した金額が、所得金額となり、その所得金額が所得税を計算する確定申告上、所得金額となります。
法人事業の場合、決算書の損益計算書で収益から費用を差し引いた金額が「税引き前当期純利益となります。そこから法人税等を差し引いて当期純利益を計算します。
税金を計算する上での利益ではなく、事業の儲けを計算するための利益を求めるのであれば、それぞれ以下のものが、だいたい同じ意味となります。
個人事業 → 青色申告特別控除前の所得金額
法人事業 → 税引き前当期純利益
ただし、個人事業であれば事業用資産を売却して儲けが出た場合には事業の所得とは異なる所得区分となるのに対し、法人事業であれば法人で行う行為はすべて法人の収益として計算するため、個人と法人で利益を同じ意味でとらえるのは実際は難しいですが、通常の事業行為を行っていて、事業用資産の移動などもないと考えれば、概ね、上記のとらえ方でいけるかと思います。
ただ、忘れてはいけない相違点として、大事なことがひとつあります。
個人事業を法人化すると、これまで個人事業主だった個人は、設立した会社の社長となり、元の事業主は会社に雇われるような形になるわけです。
ここでの大きなポイントは、法人の社長は会社から役員報酬をもらうようになるという点です。
会社から給与を受ける形になります。
役員報酬が、「ない」個人事業。「ある」法人事業。
さきほどの繰り返しになりますが、法人で事業を行う場合には、社長は役員報酬をもらい、社長の役員報酬は会社の経費となります。
一方、個人事業の場合には、事業主個人へは給与の支払いは出来ません。個人事業主の生活費は、事業で得た利益から納税資金を除いた残額すべてとなります。
このため、同じことをやっているのであれば、法人事業の利益は、個人事業の利益とは同じとはならないというわけです。
たとえば、個人事業でこういう数字の年があったとします。
売上 8,000,000円
仕入原価 3,000,000円
諸経費 1,000,000円
差引利益 4,000,000円
こうなると、青色控除前の所得は4,000,000円になります。
これが、法人事業だと、このようになります。 (役員報酬は4,000,000円にしたとしましょう)
売上 8,000,000円
仕入原価 3,000,000円
役員報酬 4,000,000円
諸経費 1,000,000円
差引利益 0円
このように、同じように聞こえる「利益」でも、意味合いは異なっています。
個人は400万利益で、法人は0円。
個人で0円利益の場合は法人では社長の報酬はとれません。個人事業で利益0は、個人の生活費が捻出できないので、事業資金はほとんど個人からの持ち込み状態です。
法人事業は、役員報酬をとってすでに経費に計上されていれば、利益は0でも問題はないでしょう。事業でもうけを出して、かつ社長に給料も出せています。
一方、個人事業の場合には、事業主が事業の財布からいくらお金を持ち出そうが経費にはならず、資金繰りや納税に支障を来さないのであれば、持ち出しは可能です。
個人事業を法人事業へ法人成りするに当たっては、自分の給与となる役員報酬をしっかり取れるかどうかという点も、ポイントになってきます。
この、給与をとるという違い。利益の意味が異なるということ。意識すべきポイントです。
法人成りをしたら会社利益と社長給与のバランスを考える
ここまで、個人事業を法人成りした場合の利益の違いと、給与をめぐるお金の感覚についてみてきました。
法人成りすると、会社は社長の役員報酬を払った後の利益から納税をすることになります。
会社は会社の利益に課税され、社長は役員報酬に課税されます。
そのため、最低限は会社の税金がいくらかかるかということを考えて、社長の役員報酬を考えることも必要かもしれません。
会社の法人税は、現在実効税率が下がっていて、30%程度となっています。
一方、個人の所得税率は、その所得額に応じて異なりますが、最高で45%税率から控除額控除後の額となります。
法人事業である会社の社長の役員報酬は、税務上、当期の見通しを立てて事前にいくらとするか決めなければなりませんが、法人の利益に課税される法人税と、社長個人の給与に課税される所得税のバランスは、ある程度は認識しておきたいところです。
これは、社長と会社全体で、いくらお金を手元に残しておけるかという点で、重要になることです。
今日は、個人事業の場合と法人事業の場合とで、利益・お金に関する考え方をみてきました。
個人から法人に移行するに当たって、はじめはよく分からないかもしれませんが、基本的な部分をおさえておけば、理解は出来るのではないかと・・・!
編集後記
今日は細かい事務仕事を片付けつつ、午後にまとまった時間をとって、明日小学校で行う租税教育講座の準備と詰め・・・。
やればやるほど大丈夫だろうかと思うが・・・大丈夫でしょう。
トークしてきます!