小規模事業の場合の消費税インパクト。売上は増加するが利益は上がらない利益モデルは想定外の消費税リスクがある。


昨日の記事では、消費税の「一千万円の壁」「五千万円の壁」について、納税がどうなるのかという論点を中心にインパクトを見ていきました。

「消費税一千万円の壁」「消費税五千万円の壁」2つの壁と消費税インパクト。

実は、昨日の記事ではさらに続きを書こうと思っていたのですが、長くなりすぎる予感がしたので昨日は昨日のところで区切り、今日はその続きを書いていきます。

今日は消費税について、小規模事業の場合の、ある利益モデルにおける税務インパクトについて考えていきます。

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小規模事業の場合の消費税インパクト

昨日の記事では、事業が軌道に乗ってきたとされる一つの指標である、課税売上一千万円越えか、その前後にある事業者の消費税の消費税インパクトと、簡易課税計算が使えるか使えないかという位置にある課税売上が五千万円の消費税についてみてきました。

今日見ていきたいと思うのは、売上には差があるものの最終的な利益は同じにある事業者の消費税インパクトです。

小規模事業から中規模事業へと方向をシフトチェンジしたタイミングで、売上を上げようとするなかで起こり得ることかもしれません。実際には中規模・大規模な事業でもあり得ることかもしれませんが、話を分かりやすくするためにも、小規模事業のシンプルなビジネスプランを例にみていきます。

利益モデルで見る消費税インパクト

事業の種類・タイプによっては、規模が大きくなり、売上も上がってきてはいるものの、なかなか利益が伸びないという場合があるでしょう。

それは、売上は上がってきているが、その売上を獲得するための仕入などの直接費が売上と連動して増加したり、あるいは給料や家賃・光熱費などの固定費のような支出が増加してしまうことで、売上の伸びを食いつぶしてしまうことで起こり得ることです。

単純に売上が伸びると、それだけで良いことのように思える反面、実はどんどん効率が悪くなっていっているという場合もあるわけですね。

仮に、以下のような損益の事業があったとしましょう。当期は消費税は課税事業者だとします。(今回も税込経理・計算の結果の下2ケタは切り捨てます)

・売上      13,000,000円

・仕入(在庫なし)   3,000,000円

役員報酬       4,000,000円

給料           3,000,000円

家賃             2,000,000円


(利益)                    1,000,000円

この事業は何らかのサービス業だと思って考えてみてください。                       (簡易課税計算のみなし仕入率は50%。課税売上消費税の50%が納付消費税です)

この利益モデルだと、利益は1,000,000円で、法人実効税率を30%と考えると法人税等は30万円になります。

そして、消費税については以下のようになります。

このモデルだと、計算すると簡易課税計算の方が有利になるので、簡易課税で計算。

課税売上消費税 13,000,000 × 8/108 = 962,900

控除課税仕入  962,900  × 50% = 481,400

差し引き    962,900 - 481,400 = 481,500

この計算でいくと、この期の消費税の納付は481,500円となります。                         (ちなみに原則課税だと、592,600円程度となるので、簡易計算が有利です)

そして、この会社が少し売り上げを伸ばしてきたと仮定しましょう。規模も若干大きくなっています。

・売上   15,000,000円

・仕入     3,500,000円

役員報酬      4,000,000円

給料        4,500,000円

家賃        2,000,000円


(利益)      1,000,000円

この例だと、売上は200万ほど増加していますが、その分経費も増えています。結果として、増収前と比べて利益は同じ結果となっています。

これだと、法人税等は上記と同じく30万円。しかし、消費税はどうでしょうか?

課税売上消費税 15,000,000 × 8/108 = 1,111,100

控除課税仕入  1,111,100 × 50% = 555,500

差し引き    1,111,100 - 555,500 = 555,600

この計算でいくと、この期の消費税の納付は555,600円となります。                  (ちなみに原則計算だと、703,700円程度となるので、こちらも簡易計算が有利です)

売上13,000,000円で利益が1,000,000円のパターンと売上15,000,000円で利益が1,000,000円のケースを見てきました。比べると売り上げは後者の方が大きいのに、いずれも利益は同じです。そして、法人税等の額も同じです。しかし、消費税等は、後者の方が大きくなっています。

13,000,000円の売上 消費税 481,500円(原則だと592,600円)

15,000,000円の売上 消費税 555,600円(原則だと703,700円)

簡易課税計算だと、課税売上を基準に消費税が上がるので、どうしても売り上げの増加は消費税の増加となります。しかし、これは実際の課税売上と課税仕入で消費税を計算する原則計算も同じです。

売上が上がっても、その分経費がどうしても同じように増えてしまうようなビジネスの利益モデルの場合、想定外に消費税がかさむ結果となるので、この消費税インパクトには留意しておきたいですね。

その先・限界点を超えた場合の消費税インパクト

ここまで見てきたケースでは、規模が少し大きくなり、売上は上がるが利益は据え置き、消費税が想定外に増えてしまった場合を見てきました。

具体的には、人員配置で給料が増えていたり、材料の仕入代金が増えてしまったり売上に呼応して経費が同じく増えてしまったわけです。

この場合でも、社長とその他2名くらいでのビジネスである場合は、社長の役員報酬が増えている分には、社長の小規模ビジネスとしては、利益が増えなくても問題はないといえます。あるいは、設備投資をして減価償却費が新たに計上されているのであれば、伸びしろのある状態での利益モデルなので、設備投資のない場合とは状況が異なります。

上記で紹介したビジネスモデルの、その先へと進むのであれば、消費税の納付額増加にも耐えられるでしょう。

また、売上に対して当面は利益が同じでも、どこかのポイントでビジネスの限界点に到達して、経費の増加がゆるやかになる可能性もあります。どこかでそのポイントが来れば、売上の増加が利益に直結して、利益モデルが確立しますよね。そうなれば、消費税インパクトにも耐えられます。

ちなみに、今回のビジネスモデルの場合では有利とされた簡易課税計算は、多額の設備投資が生じる期では消費税の計算が不利になることもあるので、時期以後での設備投資に際しては、消費税の原則計算・簡易計算はしっかりプランニングする必要があります。また、簡易課税は事業者が届出を出して選択する必要がありますが、2年縛りのような継続適用要件もあるので注意ですね。

消費税は預かり金で、預かった消費税を納めるだけというのが建前ですが、実際は取引の都合で必ずしも預り金とは言い難い側面もあります。

上記で挙げたように、利益が同じでも消費税は増額というケースがあるので、業績があまり思わしくないときに滞納を生じさせてしまうこともあるでしょう。

とにもかくにも、消費税インパクトは事業の規模を問わず考慮しておきたいところです。

編集後記

今月ゆっくり準備していた新しい試みが、年内ぎりぎりで動きが出そうです。

少しづつながら、変化をしていくことが理想ですね。

今年もあと10日です・・・!


クラウド会計ソフト対応の税理士 野田翔一です

さいたま市大宮にてクラウド会計ソフトを専門をはじめとしてサービス提供をしている税理士です。クラウド会計ソフトを使った経理の効率化、請求書や給与ソフトとの連携で経理を楽にする提案・キャッシュレス対応へのアドバイスなどを得意としています。税務顧問・スポット相談いずれも対応しています。 税理士野田翔一税務コンテンツHPはこちら 代表プロフィール税務顧問 スポット税務相談 クラウド会計導入コンサルティング
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