決算のときにやらなければいけない期末棚卸があります。
決算業務・申告の準備の際に、期末棚卸を依頼しますが、理由をしっかり説明することにしています。
というのも、決算で棚卸をする意味が、実は分かっていなかったという話をよく聞くからです。
決算での期末棚卸は、仕入金額のうち、今期売った分だけを経費とする考え方です。今日はこのあたり考えてみたいと思います。
期末棚卸の意味は実はあまり伝わっていない?
当期があと何日かという決算月の会社で打ち合わせを行っていると、不意に社長さんから、こんなことを言われることがあります。
社長「利益思ったより出そうだから、商品仕入を多めにしとこうと思うんだけど」
ん・・・!
野田「仕入して、期末までに手元に届いても全部経費になるわけじゃないですよ・・・」
社長「・・・?」
という流れです。
あるいは、こんな場合もあったかもしれません。
社長「仕入したんだけど、期日より早めに今期中に代金決済したほうが良いよね?」
野田「払っても払わなくても利益には影響でませんよ・・・」
社長「・・・?」
こういうこともあります。
前半は、社長が会計の期末棚卸を理解していなかったケース。
後半は、棚卸を理解していないのとプラスして、キャッシュを払えば経費である概念にとらわれている社長のケース。
キャッシュを払えば経費となると思っている社長は実はいて、そのあたりは支出と費用(経費)について書いた過去記事を参照してもらえればと思います。
経営者が注意しなければならない、収益・費用≠収入・支出、という概念
期末棚卸は、毎期末依頼することになるのですが、特に新規で来られた会社であったり・聞かれたりした場合には、しっかり説明することにしています。
期末棚卸が利益に与える影響
売上高 15,000,000
期首商品 850,000
当期仕入 8,150,000
小計 9,000,000
期末商品 1,200,000
売上原価 7,800,000
売上総利益 7,200,000
決算書で、損益計算書の一番はじめに出てくる部分です。
売上があって、売上から売上原価を差し引いたものが、売上総利益となっています。
期末棚卸の金額が、決算の数字に影響をしてくるというのは、ここの部分での話です。
売上から差し引いた売上原価がありますが、売上原価は仕入の金額のうち、売ったものの分だけを集めた金額となります。
売上総利益を出すためには、売上とそれに対応する売上原価の対称性から導き出す必要があるわけです。
売上原価の計算は、期首商品(前期末に残っていた在庫、言い換えると期首に手元にある在庫)に当期仕入をプラスして、一旦小計を出します。その金額が、当期中手元にあった商品の金額の合計です。そのうち、多くは売れてなくなり、一部は期末に売れ残っています。
その当期中に手元にあった商品の合計金額から、期末商品(調べてもらった棚卸在庫の金額)を差し引くと、売上原価が出ます。これは商品の仕入金額のうち、売ったものの分だけの合計額です。
期末商品の金額は、当期仕入のなかに含まれているので、期末商品を差し引かないで売上原価を計算すると、売っていない・売上に計上されていない商品まで、売上原価に含めてしまうため、売上と上下非対称になってしまいます。
売上と、仕入のうち売った分だけ経費となる部分となる売上原価が対称的に対応することで、正しい利益が計算されるわけです。
これが分かっていないと、期末に駆け込みで仕入れた1,200,000円の期末在庫が、経費とならないため、これを想定していなかった場合には利益が1,200,000円狂うことにもなりかねません。また、売上原価の計算では、当期仕入に期首商品をプラスする過程がありますが、一旦仕入にプラスすることで、これは売上原価を増額させています。
当期仕入を基準に考えると、期首商品はプラスし、期末商品はマイナスする。それで売上原価を求める。
毎月棚卸をするか、過去のデータからある程度の幅で売上原価を推定できる場合には推定で棚卸をするかしている会社は別として、期末まで棚卸を認識しない会社であるなら、期末に大きく数字が変わってしまうので、しっかり棚卸は把握されたほうが良いでしょうね。
期末駆け込み経費はのせるのが難しい
今回の在庫の棚卸にしても、以前に記事にした期末駆け込みでの車の購入でも、
期末駆け込みの経費は即時に経費にのせるのは、なかなか難しいところになってきます。
期末駆け込みはやりにくいようになってしまっています。
ただ、それでも少ないながら、期末駆け込みに似たようなもので、出来るものはあるにはあります。それでもやり方を間違えるとそれはそれでダメなのですが・・・。近いうちに記事にあげます!
棚卸の考え方は、簿記検定を受けた人ですら実は意味は分かっていなかったということがあるように、一回どっぷり深く浸かってみないとなかなか分かりにくい論点です。ただ、分かりにくいだけに、それが分かっていればそれなりにアドバンテージともなり得ます。
今回は卸売りを想定しましたが、製造、小売、その他なんでも期末在庫の概念は絡んできます。しっかり追求してみましょう。
編集後記
昨日から「ストーリーとしての競争戦略」を遅ればせながら読み始めています。
長いストーリー・旅になりそうです。なんせ500ページくらいありますからね・・・!